
累犯障害者と向き合う支援の現場から
大麻分区 蒔苗 浩伸
前略、江別地区保護司会の皆様、お世話になります。昨年12月に保護司を委嘱されました年は往ってますが、新人の蒔苗でございます。
もう何度か総会などを出席させていただいていますので、お見知りおきいただいていると思いますが、触法者の更生保護を地域生活定着支援の観点から報告させていただきます。
私は、今まで医療や福祉に特化した建築関係の仕事をしていまして、平成25年頃、昨今話題になっている、建物やシャッター街と化した商店街の再開発を企画していました。そんな中で時代の流れと共に取り残されているアパートの再利用を検討していて、これまでと違った利用価値が求められる対象はどんな人達だろう?と考えていたところ、刑務所から出た人はどこに住むのだろう? 帰る家族がいる人は良いけど、刑務所に入った事で身内から疎遠になった人はたくさんいるはず、そんな人達にあったかいごはんと、雨風しのげる部屋に、自己表現できる仕事があれば悪いことしないよね。と軽く考え、それにご飯支度や掃除に洗濯をしてくれるおばちゃんはパート口が出来るし、空き部屋で困っているアパートオーナーも喜ぶよな~なんて考えて、事業化を検討していました。そして、現在障害者グループホームという障害福祉サービス事業を江別市文京台で4棟運営しています。
皆様保護司の方々は、直接保護観察所から依頼されて対象者と向き合いますが、福祉サービスでは「地域生活定着支援センター」という団体が、保護観察所から特別調整や一般調整と言われる処遇対象者を、福祉の観点から支援を行い、再犯の抑止に繋げる取り組みです。
これは、知的障害者や精神障害者及び65歳以上の高齢者の犯罪の中で多いのは「窃盗」や無銭飲食や無賃乗車等が含まれる「詐欺」で「困窮・生活苦」が主な犯罪動機なっています。
このように、高齢者や知的障害・精神障害の対象者たちは、罪の意識が低く、何度でも同じような罪で収監され、累犯障害者と称されています。
この累犯障害者の人達には、福祉の観点から支援する必要がありますが、罪を犯して社会に迷惑を掛けてきた事実はあり、なかなか社会に受け入れて貰うのは難しいです。
厳しい制裁はあって当然と思いますが、ここでうちの入居者の事例を少しだけ紹介します。
Nさんは、岩手県出身で高校の時に精神分裂症を発症。と言っても今で言う引き籠りの少し自閉症のある子でしたが、埼玉などで就職していました。お腹が空いてスーパーで海苔巻き300円相当を盗み万引きの現行犯で逮捕され、2年6月の実刑判決で月形刑務所に収監されました。何と前科8犯だったかな、いま55才でうちのグループホームで7年暮らして何のトラブルもありません。次にOさんは、新宿生まれで親兄弟は無しの知的障害の67才、何と詐欺罪で前科10犯、神社の賽銭泥棒、自販機のつり銭詐欺等で警察に引き渡されこれも月形刑務所入り。
最後の詐欺は、自販機に千円入れたけど商品が出ないと店主にクレームを付け、千円を返してもらう手口だったそうです。Oさんは入居してもう5年になりますが、毎週日曜日に温浴施設に通うのが楽しみのおじいちゃんです。最後の紹介は、Yさんで知的障害の58才です。Yさんは建設現場で働いており、現場事務所のコーヒーステック150円相当を盗んで捕まり、これまた2年6月の実刑で、前科8犯、満期で出所。私が月形刑務所にお出迎え致しました。Yさんはグループホームでの生活を3年で卒業したのち、埼玉の兄を頼って帰京しましたが、残念なことに建設現場の事務所でまたコーヒーステックを盗んで御用となったようです。
話しが少し長くなりましたが、私が皆様に紹介したかった事は、知的や精神などの障害がある人、高齢で先行きの不安を抱えている人達は、「生活苦や困窮」により同じ過ちを犯していることに気が付いたでしょ。
彼らには、誰かを恨んでとか、世の中に不満を抱いてとかでなく、お腹が空いて、お金が無くてという理由で窃盗や詐欺を繰り返し、罪の意識が非常に低いと言う事です。
このような累犯障害者が全国の刑務所に2割~3割相当数が服役されているようです。
この累犯障害者に、社会の常識を教えて行かなければなりませんが、何せ親・兄弟・親戚はおろか友人もほとんどいない文字通り天涯孤独な人達に、警察や裁判所を経て刑務所に収監されることなど何ともない事で、逆に安心できる場所らしいです。
うちのグループホームは現在40名程入居していますが、一般の障害者よりこの累犯障害者の方が規則に従順で、聞き分けが良く、刑務所で訓練されてきたせいなのか生活のリズムが備わっているようです。
保護司の皆様が普段向き合っている対象者は、家庭環境や犯罪の内容がもっと厳しい状況の方々が多くいらっしゃると思いますが、そんな対象者も生き辛さを抱えたまるで障害者のようだと思っています。だから保護司の方々もどうかどうか対象者の話しをよく聞いてあげて下さい。彼らは社会から疎外されて、世の中に嫌悪感を抱いて、人を信用していない。だから話を何度でも聞いてあげて、頑なに固まったこころと向き合ってやってください。

保護観察期間中に成果が見られなくても、いつか振り返ったときに、あの時の保護司の先生はいっぱい話をしてくれて良かったな~なんて思ってくれますよ。絶対に!
私も過去に支援を失敗したなと思ったKさんが居ました。彼はうちに入居して半年で刑務所に逆戻り。事情聴取と家宅捜索の後、Kさんは「お前に騙された」と捨て台詞を言い放って出て行きました。私は悔しさと後悔の念をずっと抱いていました。そうこうして3年が過ぎたころ、別の用務で札幌刑務所に出向いた折、福祉専門官からKさんの近況が聞けて今は札幌のグループホームで元気にやっているとの事。
「蒔苗さんにはいろいろ迷惑を掛けたけど感謝している」と言う話を聞いてうれしかったですね。
彼らは口下手で、自分の気持ちを素直に表現できない人が多いと思いますが、きっと皆様が今までとこれから出会うであろう対象者も、こころの中では感謝している事でしょう。
敬具
